はじめに
2023年10月から細々と公開していた「基幹送電線潮流実績可視化サイト」を大幅に改修しました!
ここでは、今回のアップデート内容を含め、OCCTO が公開するデータをどのように加工・補完し潮流を表示しているかについてまとめています。
都内供給系統の追加
昨年の公開時点では「外輪系統」の一部のみを掲載していましたが、今回新たに「都内供給系統」も掲載しました。これで、東電管内で潮流実績が公開されているすべての送電線の掲載が完了しました。
都内供給系統とは、関東の中枢である東京を中心としたエリアに網の目のように張り巡らされた27万5千Vの基幹送電線です。遠方の発電所で作られ、東京の郊外まで送られてきた電力は、この都内供給系統を通って都心の変電所へと送られていきます。都市部では送電鉄塔を建設することが難しいため、都内供給系統には地下ケーブルも多く使われています。高速道路で例えるなら、東名道や東北道に対する「首都高速」のような位置づけです。
都内供給系統の潮流を表示したことで、東京湾西岸に立地する火力発電所からの潮流が部分的ではありますが見えるようになりました。50万Vの送電線だけに着目していると、火力発電所が千葉県だけに集中しているように見えますが、実際には川崎・横浜周辺に数多くの火力発電所があり、27万5千Vの都内供給系統に電力を供給しているのが分かります。
潮流実績が公開されていない送電線はグレーで描画
東電の空き容量マップに掲載されているものの、OCCTOで潮流実績が公開されていない送電線が多数あります。このような送電線をグレーで描画し、どこに送電線が通っているのか分かるようにしました。
送電線の太さは容量を表す
送電線の太さは、その送電線の運用容量(平常時に流せる最大の電力)に比例しています。空き容量マップで運用容量が公開されている送電線については、その値をそのまま使っています。
発電所に接続されている送電線を中心に、運用容量が公開されていない送電線が多数あります。これらについては、「接続されている発電所の最大出力」を太さとして反映させました。
T分岐による潮流不明送電線
潮流実績が公開されている送電線であっても、T分岐によって途中から潮流が不明となる送電線が多数あります。例えば、西群馬変電所と新富士変電所を結ぶ西群馬幹線については、西群馬変電所から送り出される潮流が公開されています。ところが、この送電線は途中でT字型に分岐して神流川揚水発電所に接続されています。神流川発電所の出力が公開されていないため、神流川発電所より南にどれだけの電力が流れたかは分かりません。よって、神流川発電所以南をグレーにしてあります。
このように、T分岐によって途中から潮流が不明となる箇所は多数存在します。以下にその一覧を示しておきます。
- 鹿島線 筑波南~新野田間
- 北千葉線 千葉中央~新京葉間
- 墨東線 墨東~永代橋間
- 江東線 葛南~江東間
- 東京中線 上尾~北東京間
- 西南川越線 南狭山~多摩間
- 港北線 荏田~西東京間
- 東京南線 南横須賀~逗子間
- 秦浜線 中相模~新秦野
開閉所の出入りで潮流が推定できる送電線
「変電所」と違って「開閉所」はあまり聞き慣れない方も多いかもしれませんが、変圧器を備えておらず、送電線の接続を遮断したり切り替えたりするスイッチギアのみを備えた場所のことをいいます。
開閉所は変電所と異なり、電圧の低い下位系統に電力が出入りしないため、基幹系統から開閉所に入ってくる電力と出ていく電力は等しくなります(正確には開閉所の中で使う所内電力の分だけ減少しますが、ごく小さいとみなしています)。このことを利用すると、開閉所に潮流非公開の送電線が接続されていても、他の送電線の潮流を使って、in と out が一致するように非公開の送電線の潮流を計算することができます。このようにして潮流を推定した送電線は以下の通りです。これらの潮流は推定値であり、公開されているデータではないことにご注意ください。
最後に
本サイトは個人の趣味であり、データの正確性について何ら保証は致しません。あくまでも各人の裁量でお使いください。なお、間違いやご指摘、アドバイス等がございましたら、お気軽に本ブログのコメント欄にご意見をお寄せください。